狐の男の子がやってきてお母さん狐に言いました。
「うわぁ! かざぐるまがいっぱい!」
お母さん狐が言います。
「坊や、それは曼珠沙華って言うお花よ」
「なーんだ、そうかぁ。だから吹いても回らないんだ~」
さっきから花をフーフーと吹いていた坊やは、
つまらなさそうです。
お母さん狐は「ちょっと待っていてね」と言うと呪文をとなえ、
曼珠沙華をかざぐるまにかえました。
「ありがとう! お母さん」
子狐は曼珠沙華のかざぐるまを持って走り出しました。
かざぐるまは気持ちよさそうに クルクル 回りはじめます。
子狐が楽しくなって、よけいに早く坂道を走りまわると、
かざぐるまもいっそう早く、クルクル クルクル 回りました。
走りまわって男の子がそろそろくたびれそうになった頃、
「シィッ!!」
お母さん狐が言いました。
「人の声がするわ。きっとお墓参りの人たちね。
さぁ、見つからないうちに帰りましょう」
男の子は「は~い」というとかざぐるまを置いて
お母さんについていきました。
それからしばらくすると、今度は人間のお父さんお母さん
そして男の子が山道を上ってきました。
お花の入った桶を持っています。
「わぁ! かざぐるまだ!」
ちょっとくたびれかけていた男の子は、
とたんに元気になって言いました。
「誰のだろう?」
不思議そうに男の子が拾うと、
かざぐるまは風もないのにクルクル クルクル
歌うようにまわり始めました……
とさ。お話はこれでおしまい。ぼうや、おやすみ。