2010年10月24日日曜日

いつかここで泣く人のために

 
                「この占春園には幸田文さんが植えてくださった
                 小鳥の好きな実のなる木があります。大切に育てましょう。 
            筑波大学付属小学校 文京区役所」

茗荷谷から小石川へ行く途中にあります。
お得意先に行った帰り、いつもちょこっとだけ寄ります。
 
先日もこちらに寄って、帰ろうとしたら、
私より年配の女性が入って来られて、
「ここはいいところですね~」と言われます。
「ええ、そうですね」と私。
「ほんとうにいいところだわ。
悲しいときに泣きにきても、誰もいないもの。
思いっきり泣けそう」
 
「ええ、ほんとうにそうですね。」
そんなことしか言えなかった。
  
今の私は泣きたいほどの悲しみを抱えていないけど、
人生のはじめの頃に悲しいことがあって、
樹々や花や虫たちにとても慰められた経験がある。
そして文さんの小説を読むと、その境遇に
少し自分のと重ねあわせることができたりもする。


樹を植えることを決めたとき、
文さんにはどんな思いがあったのだろう。
東京に少しでも緑を、という思い、
賑やかに囀る鳥たち、それを観察する子どもたち…。

だけどそれだけではなく、
やがてこの庭を訪れて泣く人のことも、
考えておられたような気がしてならない。

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